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最高の素材を求めて ~第一弾 モヘア、アルパカ編

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ニット糸の最高の原料はどこにあるか? と一言に言っても、ウール、モヘア、アルパカ、カシミヤと、それらの羊やヤギが、何故その土地にいるのか?という背景に長い歴史がある。

ニットといえばウール、ウールと言えば羊で、羊のことから話すのが順等のようだが、これをまとめようとすると、恐ろしい時間を費やすことになるので、今日はひとまず他、から始めようと思う。

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現在最高のモヘアといえば南アフリカ産だが、モヘアが其の地へ渡った背景にも人類の戦争と侵略の歴史がある。

元来モヘアは、繊維のダイヤモンドと呼ばれた。その光沢や縮まない特性が重宝され、英国王族の着るスーツ等に用いられていた。
そして最初は粗い繊維だったモヘアは、繊細な繊維へと進化していく。
大体において、王国のあるところで繊維は最高のものへと進化を遂げた。


王国といえば、インカ帝国 ~現在のペルー、ボリビア、エクアドル辺り~ の時代、アルパカはカシミヤよりも上等な素材で、その"ぬめり感"や、"柔らかさ"は極上のものであったとされる。ポルトガルに占領されたことによって、この"インカのアルパカ"は、ヨーロッパで神聖であった羊にとって変わられる。
また、北アメリカへ、ユーラシア大陸へと渡り、それぞれの自然環境にあったものへと改良されていく。ちなみにキャメルは、このユーラシアへ渡ったアルパカが原型である。


モヘアは元々トルコが原産地、大昔はペルシャ絨毯に使われていた。これも今はウールに変わられ、"モヘアの絨毯"は何処にも見つけることができない。これはインカのアルパカも一緒で、かろうじて美術館に展示されているのを見たが、ペルーを何度も探し回り、結局見つけることはできなかった。

ところが、である。


北欧はコペンハーゲンの街で、南米の食器などを並べたアンティーク屋の前を通りがかり、おや? と思って何の気なしに入った店内に、なんと!


うぉおーっっ! 見つけたっっっ!!   のである。


インカの、ペルーのアルパカの生地が売られていた。


アルパカの生地を手に立ち尽くし、はっと振り返り見た店主は、20歳くらいの若者である。そして、よくよく店内を見渡してみると、半分は南アメリカの骨董品だが、もう半分は、なんとアニメのフィギアで埋め尽くされている。
この若者、いかにもアニメおたくの風貌であった。おそらく、お父さんの店に息子の趣味が入り込み、現在の風体をなしている模様。
幸いにもこの店主は留守で、南米の骨董品などにはおよそ何の興味もなさそうな息子が、店主の付け値の40万円を、私の言い値の8万円にいとも簡単にまけてくれた。


感極まり、足取り軽い私に"インカのアルパカ"を見せられた奥さんは、その10cm四方の布きれに私が8万円を投資したことを知り激怒していたが。。。

この"インカのアルパカ"は今も額に入った私の宝物である。


最後に、"モヘアの絨毯"とも、後に南アフリカのとあるホテルの中で出会うことになる。
これもせいぜい10cm四方の絨毯のはしきれが、ガラスケースの中に飾られていた。


いつか"モヘアの絨毯"を、この手にするのも夢見ている。

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